AIは生産性を向上させる一方、誤った情報を出力したり機密情報を漏えいさせたりするリスクがあります。手放しで利用することも、逆に利用を制限しすぎることも好ましくなく、リスクコントロールの元での利用が望まれます。

またこれらは「いつでも・誰でも・どこででも」(今だけでなく将来も、担当者が誰であろうと、どの部署であろうと」公正に判断できるよう、明文化されているべきです。

当社の例

そこで当社では下記のようにしています。

# AIガバナンス

AIの活用による生産性向上とリスク低減を両立するため、最低限の原則と禁止事項を定める。

## 基本方針

AIは目的に対して妥当で、かつリスクを許容できる場合に用いる。
全ての用途を一律で許可あるいは禁止するのではなく、用途やリスクに応じた取り扱いを行う。

## AI利用の定義

本ポリシーにおけるAI利用とは、生成AI、機械学習モデル、推論API、外部AIサービスその他これに準ずる仕組みを業務やサービスに使うことを指す。

## 利用の原則

AIの出力は最終的に人間が持たねばならない。
出力の結果にだれも責任が持てない使い方をしてはならない。

### リスクに応じた取り扱い

AI利用は一律に扱わず、影響の大きさに応じて管理レベルを変える。

- **低リスク**: 例) 公開情報を元にした下書き、要約、作業の軽微な補助
- **中リスク**: 例) 内部データを使う処理、対外文書の作成補助
- **高リスク**: 例) 決済、契約、個人情報、機密情報、影響が大きい意思決定

影響が大きいものは、確認や記録の作業を強く行う。
リスクが高すぎて許容しがたい場合はAIを利用してはならない。

### 人による裁可

重要な判断は最後に人が確認し、裁可すること。

最初から全自動化ありきで設計せず、自動化してよい範囲、人が承認すべき範囲をリスクに応じて決定すること。

### 入力データの取り扱い

個人情報、機密情報、秘密情報をそのまま外部AIサービスに投入してはならない。
分析に用いる場合は事前に匿名化・マスキングし、流出しても問題ない状態まで無毒化すること。

学習利用、再利用は拒否すること。

### 誤りを織り込んだ出力の扱い

AIの出力は常に誤りうる前提で扱う。

- 数値や契約、対外説明など重要情報は原典確認する
- コードや設定変更はレビューとテストを実行する

## 禁止事項

以下は禁止する。

- 法令、契約、社内規程に反する形でAIを利用すること
- 差別、不当な不利益、権利侵害を招く用途に使うこと
  - 商用利用・再利用が規約で禁止されている生成物やAIによるライセンス汚染が問題となるOSSの導入にも注意すること
- AIサービスに機密情報を入力すること
- 高リスク領域で人の確認を省くこと

## 記録と文書化

AI利用を業務に導入する場合は、黙って行うのではなく、明示的に証跡を残した上で行うこと。

保存形式やフォーマットは自由だが、下記が含まれるようにすること。

- 目的・用途と対象業務
- 利用開始日
- 利用者および責任者
- 利用するAIやサービスの名称
- 入力するデータの種類
- 想定リスク

また見直し日、変更履歴、事故や問題も随時記録すること。

## 導入後の見直し

AIの利用は継続的に見直すこと。

確認対象の例

- 利用のされかた
- 想定外の使われ方
- コスト
- 外部サービスやモデルの仕様変更
- 法令、契約、社内ルールの変更
- 苦情、事故、ヒヤリハット

レビュー頻度は影響に応じて決める。

- 高リスク: 必要時および定期的(例・四半期ごと)
- 中リスク: 変更時および定期的(例・半年ごと)
- 低リスク: 必要時

## 問題発生時の対応

AI利用で問題が起きた場合は、まず被害拡大を止め、その後に原因と再発防止を確認する。

対応の基本

- 利用停止
- 関係者への連絡、エスカレーション
- 影響範囲の確認
- ログと証跡の保全
- 原因調査
- 再発防止
- 必要に応じて公表、報告、顧客対応

## 例外

業務上やむを得ず本ポリシーの例外運用が必要な場合は、記録を残し、かつ責任者の承認を得て行うこと。

## 参考

- 国立標準技術研究所(NIST)の「AIリスクマネジメントフレームワーク」(AI RMF)([邦訳版](https://aisi.go.jp/output/output_information/240704/))

解説

ビジネスにおいて、完全なゼロリスクの達成は非現実的なことが多いものです。なにもしないことさえも逸失利益発生のリスクがあります。

これはAIについても同じことが言えます。そこでゼロリスクではなく、リスクを許容範囲内に収めることを狙ったのが上述の文書です。個人情報や機密情報のように流出リスクを負えないものについては最初から使わないようにしていますが、それ以外では積極的に利用していけるよう、どういう場合なら使ってよいのかを明示しています。

事故対応についても用意していますが、これはリスクヘッジの考え方が近いです。万一のことが起きた際、どのような後処理が行われるかわからないのでは不気味で使いづらくなります。そこでポストモーテムで対応することを明示しています。